YAMAHA Silent Guitar SLG100S '05

 

  • メイプル胴
  • マホガニ・ネック チェリーレッド仕上げ
  • ローズウッド指板
  • ローズウッド・ブリッジ
  • ペグ:RM1273G-4B
  • センサー:L.R.Baggs
  • AUX IN 端子、AUX IN レベルコントロール
  • LINE OUT端子(モノラル)
  • ヘッドフォン出力端子(ステレオ)
  • ボリューム、ベース、トレブル
  • リバーブスイッチ(OFF/1/2)
  • ヘッドフォンスイッチ(ON/OFF)
  • LINE OUT端子兼POWERスイッチ (ジャック差し込み時ON)
  • 電源アダプター、乾電池9V兼用

'06年購入。

 

密接した住宅環境、宿泊環境、その他、音(人によっては騒音になる)に対する意識が変わって来た現代。
『音を外に出さずに済む楽器』の開発は、ピアノから始まって、ヴァイオリン、ギター、コントラバス等、各社様々に音作りに工夫をして、数多くの製品を出してきた。
これは、ステージでの演奏におけるアコースティック楽器のハウリングを防ぐ工夫から生まれて来た様なものかもしれない。
しかし最初の内は、なかなか本物に近い音は望めなかった。

GodinやSadowsky のエレアコの様に、コンサート・レベルの楽器なら高いお金を払えば手に入るが、私は手軽さを求めたかった。
軽くて持ち運びし易くて、音が良く、ホテルの部屋でも楽屋でも、大きな音が外部に出ずに安心して弾ける。
いざとなればライヴや録音にも耐えられる。
そしてあまり高価でない楽器。
そんな贅沢な要求に、改良されたこのYAMAHA SLG100Sは応えていると思った。

 

 

メイプル製の胴。
マホガニ製のネック。
ローズウッド指板。
ローズウッド・ブリッジ。
ブリッジのセンサーはL.R.Baggs
構えた時にボディーの上側になる部分は、ストラップ・ボタンを止めネジとしての着脱式である。

 

ボディーの裏と側面に各種コントローラー。
裏の上に見えるのが9Vバッテリーケース。
下の方にあるノブがAUX IN レベルコントロール。
その下左からLINE OUT端子兼POWERスイッチ(ジャック差し込み時ON)、AUX IN 端子。
側面は上から
電源インジケーター、リバーブスイッチ(OFF/1/2)、ボリューム、ベース、トレブル、ヘッドフォンスイッチ(ON/OFF)、ヘッドフォン出力端子(ステレオ)。

 

ヘッドのトップはローズウッド。
ペグはRM1273G-4B

 

 

'06年正月。

私は京都南座で3日から25日まで井上ひさし原作『たいこどんどん』の、たいこ持ちの桃八を主演していた。

三時間半の上演時間の間ほとんど喋り続け、富本節の三味線弾き語り、落語、小話、かっぽれ、等の芸を場面の繋ぎに披露するという、とんでもなく大変な役である。
折からのインフルエンザ大流行で初日から出演者が何人かやられ、私も何となく元気が無くなりそうだった。

連日昼夜二回公演が続く中、昼一回の公演だった5日に、気分転換に楽器屋巡りをした。
京都三条河原町の【ジュウジヤ】にこのモデルが何本か並んでいた。
弾き比べてみて、特にこの一本が気に入った。
京都にはベースしか持って来ていなかったし、元気を出すために
「よし。今日から作曲でもしようか♪」
と思い立ち、買った。

 

そしてホテルの部屋に帰ると、急激に体調が悪くなり発熱した。

 


何とか熱を下げようと、水分をたくさん飲み、熱い風呂に入って汗を流したり、体力の付く物を食べたり、様々な工夫をして頑張った。
しかし翌日は39度の高熱で朦朧としていた。
昼夜の間に医者に行って点滴をしてもらい、夜の部を何とか務めた。
私が元気だった事もあり
「インフルエンザではないだろう」
という診断だった。
が、熱はいっこうに下がらない。
翌日は朝から点滴。夜の部は座薬を使ったが、やはり熱は下がらない。
終演後、また医者に行くと
「ちょっと熱が続きますね。インフルエンザかどうか一応調べてみましょう」
という事で調べた。
検査結果は実にはっきりと【A型インフルエンザ】だった。
今更ながらタミフルを飲まされたが、効く筈も無かった。
以後私は38度の熱で、点滴を打ちつつ昼夜二回公演の連続を務め、五日後に熱が下がってから気管支炎を併発し、激しい咳を我慢しつつ出難い声を振り絞り、25日までの公演を苦しみながら命辛々という感じで務めた。
『たいこどんどん』という芝居の主役【桃八】は、私が経験した中では一二を争う大変な役である。
以前、大阪中座で一ヶ月公演した時も、途中で声が全く出なくなり、
『終演後に東京へ帰って医者に行き、翌朝の始発で大阪に帰って昼夜二回公演を務め、
また東京に帰って治療し翌日大阪へ戻って公演』
という悪夢の様な経験をした。
今度ばかりは無事に終えたかったが、更に最悪の状況を経験した。
しかしこんな状態でも声は出ていたしチャンと演じていたから、お客様は気付かなかったそうだ。

 

というわけで、このYAMAHA SLG100S は暫く弾かずじまいだった。

 

'07年4月15日。
私と寿子の結婚式を、寿子の実家のある神戸で挙げる事になった。
'06年9月21日に入籍して以来、過密スケジュールでなかなかチャンスが無かったのだ。
両家の家族と親戚だけで、少人数での結婚式と披露宴。
せっかくだから手作り感を楽しもうと、二人で曲を作って披露することにした。
高校生以来、本当に久し振りの〔歌詞のある歌〕の作曲。
歌詞は妻と二人で。
作曲と演奏は私が全て担当。

私は劇団前進座の『お登勢』(船山馨原作、ジェームス三木脚本・演出)四国巡業で直前まで旅中だ。
旅先のホテルで作曲録音しなければ間に合わない。
そこでこのギターが大活躍である。

 

 

デジタル・レコーダーに直で繋ぎ、効率良く録音出来た。
リーズナブルな値段からは考えられない様な、しっかりした音。
しかも弾き易い。
YAMAHA SLG100S を買っておいて本当に良かった。

 

基本をこのギターで作り、後はPro Tools LE で細かく仕上げる。
ベースやストリングスを重ねて行くのだ。
結婚式当日は、このカラオケにプラス生演奏&生歌。

 

妻と二人で作る、初めての【二人のオリジナル曲】である。
記念すべき歌は、このギターで生まれた。

 

このYAMAHAの傑作商品は、これからも大活躍することだろう。

 

 

(写真撮影:光齋昇馬)

 

 

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